雨。

 

 

 

軒の雫を眺めながら

そういえば子供の頃も、こんな雨の日に

次に落ちるのは水滴かを予測して、こうして雫を眺めていたと思い出しました。

 

 

糸を辿るように

もうひとつ雨の思い出。

 

 

 

 

 

 

雷がなる午後、中庭に面した薄暗い部屋の掃き出し窓に頭を向けて

独り仰向けに寝転がる母の姿を何度か見たことがあった。

 

 

幼いながら

伝心するものがあったか無かったか

 

一度だけ、徐に横に並んで同じように仰向けになってみたことがある。

 

「何してるの?」と聞くと

「雷を聴いているの」と母。

 

 

 

空が光ってから音がなるまでを数えているのだと教えてくれたから

一緒になって静かに心の中で数えてみた。

 

雨音と雷鳴だけが流れる時間。

 

 

 

 

 

 

 

「ママが家を出る時は、一緒に連れて行くからね」

 

 

 

ポツリと母が言った言葉に答えることも無かったと思う。

その時間がどんな風に終わったかは覚えていない。

 

 

結局、雨の日の約束は果たされることはなく

十代で私の方が先に家を出た。

 

 

 

 

 

 

今日の雨。

雫を眺めながら、

もうとっくにその頃の母よりも年上になった私は

あの時の彼女の気持ちに寄り添っていた。

 

 

 静かに涙の雫。

 

 

 

 

 

母にだって

父にだって

大切なものさえ手放さなくては

自分の心が壊れてしまうような

どうしようもない時があったって何もおかしくない。

 

親である前に、一人の人だと、

その人生を認めてあげることができるようになることが

大人になるということだと思う。

 

 

 

若い母の気持ちに寄り添って流れた涙は

その時に母の痛みを受け止めようとした

子供の頃の自分を慰める涙にもなるかもしれない。

 

 

 

 

 

 

ってね。

 

静かに雨を聴き

雫にもの想う時間でした。